自己破産・個人再生相談所 お役立ちコラム 自己破産
自己破産・個人再生などの事例や実績などを紹介して、より分かりやすく、自己破産・個人再生にして解説します!
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2015.07.07 自己破産
自己破産する人は原則として、当面の生活や再生に必要な分を除き、財産を債権者に配当しなければなりません。
めぼしい財産がないと思っている人でも、借家住まいで退去の際に戻って来るであろう敷金が債権としてあるかも知れません。
敷金返還請求権は「財産」にあたるか
自己破産をすると、一定の範囲を超える財産は基本的に手放さなければなりません。では、そもそも「仮に将来借家を退去したときに返還を受けることができる敷金」の返還請求権は、「財産」に含まれるのでしょうか。
基本的には現金、預貯金、不動産、自動車など金銭的価値のあるものはすべてということになりますが、見落としやすいものとしては保険の解約返戻金など、まだ目の前に具体化していない財産権があります。借家を退去した際の敷金も債権ですから財産権に当たります。
もっとも、敷金返還請求権は退去する際に発生するわけですから、いわば「将来受け取ることのできる財産」です。しかし、このような将来の債権も破産財団として組み入れられることになっています。よって、敷金返還請求権も、破産手続上は「財産」にあたりますので、「敷金は破産とは全く関係ない」ということにはなりません。
賃貸借を解除する必要があるのか
では、破産をすると、今の家を退去して、敷金の返還を受けたうえで、それを各債権者に分配することになってしまうのでしょうか。
破産法の上では破産管財人には賃貸借契約解除の権限が与えられていますが、実際に債務者が賃貸借契約解除によって住む場所を失ったのではまったく破産者を再生させるという手続上の意味をなさなくなってしまいます。
そのため、たとえば東京地方裁判所では、破産法上の「自由財産の拡張」という制度を使って、破産をした人が今の家を退去しなくてもよいような運用をしています。「自由財産」とは、その名の通り、破産した人が自由に使ってよい財産、言い換えれば、破産しても裁判所に没収されない財産のことです。簡単に言えば、敷金は没収されない、つまり敷金を裁判所に納めるために今の家を退去する必要はない、ということになります。(東京地方裁判所以外の裁判所でもこのような運用の裁判所が多いと思います)
なお、たとえ敷金の金額が20万円以上であっても、敷金については全額が自由財産とされるのが通常です。(ただし、敷金が極端に高額な場合は別の扱いとなる可能性があります)
敷金返還請求権を含めたら同時廃止になるか?
原則として、破産財団をもって破産手続きの費用をまかなうのに不足するとみられる場合は「同時廃止」といって、配当手続が行われずに即時に終了し、裁判所の免責決定がおります。すなわち、自己破産を申し立てた人の財産が少なすぎて、このまま手続を進めたとしても、国が破産管財人に支払うべき管財人報酬等の費用すら出ないという場合は、裁判所の方で、破産手続をそれ以上進めず終了させ、すぐに免責手続に移るという方法を取るのです。(少し難しい話ですので、ここでは、「破産する人の財産が少ない場合は、『同時廃止』と言って、手続が安価・簡単に終了する場合がある」程度に考えておいてください)
同時廃止となる基準の金額は東京地方裁判所の破産手続の場合「破産財団に含まれる財産が20万円以上あるかどうか」です。たとえば、銀行預金が合計20万円以上あれば、同時廃止になりませんので、同時廃止になった場合よりも余計に費用がかかり、また免責を受けられるまでにもより期間がかかってしまうことになります。
そこで、この20万円の中に敷金返還請求権を含めるのかどうかが問題になってくるのですが、含めずに考えてよいというのが東京地方裁判所の運用です。つまり、仮に敷金が21万円あったとしても、その他の財産が少なければ、同時廃止で手続を進めてもらえるということになります。
よって、結論としては、「借家である自宅について、20万円以上の敷金返還請求権があったとしても、破産手続きの為だけに自宅を退去する必要はない」ということになります。