電柱やガードレールに「即日融資」や「自己破産者OK」などと書かれたチラシを見たことはないでしょうか？

これらは「090金融」という違法な貸金業者の可能性があります。

業者の特定が難しいとされる「090金融」とは、どのような手口なのでしょうか？この記事では、その手口や特徴などを解説します。

090金融とは

090金融とは、店舗で固定電話を設置せずに携帯電話を用いて違法な貸し付けを行う貸金業者を指し、その多くが闇金業者です。

「090」「080」「070」などの携帯番号のみを使用することから「090金融」と呼ばれています。

チラシを使った宣伝には「ブラックOK」「来店不要、即日融資」などと記載されています。

090金融の特徴と手口

090金融はどのような特徴や手口で違法な勧誘を行うのでしょうか？それぞれ解説します。

固定電話がない時点で違法

貸金業を営むには、貸金業法に基づき財務局長または都道府県知事の登録が必要になります。

貸金業者は営業所や事務所に加え、各営業所に固定電話の設置が義務付けられています。

090金融は携帯電話のみで営業しているため、禁止されている無登録業者になります。

090金融が厄介な理由

090金融が闇金と同様に厄介な理由があります。ここではその理由を紹介します。

固定電話がなく、所在地の特定が難しい

固定電話がなければ、営業所や事務所の所在地がわからないため、所在地の特定が難しくなります。

携帯電話から個人を特定する必要があり、捜査が困難

090金融は、携帯電話から所在地等を特定するしかなく、固定電話を設置していないため、警察が動いたとしても捜査や摘発が困難になる可能性があります。

090金融の違法な手口

090金融は違法な貸し付けを行う貸金業者ですので、闇金業者と同様に無登録営業がほとんどです。ここでは、090金融の違法な手口について解説します。

法外な金利での貸付

闇金と同じように法外な金利での貸付を行います。

闇金の金利は、一般的に「トイチ」と呼ばれる10日で1割が多いです。1年間で360％と驚くほどの高金利となっています。

例えば、トイチで10万円借りると、10日で1万円、20日で2万円と増えていきます。

ところが、闇金業者はトイチ以外にも10日で2割のトニ、10日で3割のトサンなどと、超高金利を設定しているところもあります。

年利に置き換えると、トイチは年利365％、トニは年利730％、トサンは年利1095％となります。

貸金業法では金利の上限が定められており、利息制限法と出資法の法律が関わっています。

利息制限法では、元本10万円未満の場合は年利20%、元本10万円以上100万円未満の場合は年利18%、元本100万円以上の場合は年利15%となっています。

上限を超えると行政処分の対象になり、超えた部分は無効となります。

一方、出資法の改正前はいわゆる「グレーゾーン金利」と呼ばれる29.2％を超えなければ刑事罰とされていませんでした。

しかし、出資法改正に伴い平成22年6月18日以降の上限金利は20％に引き下げられ、これを超える貸し付けは刑事罰の対象となりました。

このように090金融は貸金業法違反（無登録営業）、出資法違反（高金利等）に該当します。

過去には、貸金業法違反（無登録営業）と出資法違反（超高金利の受領）容疑で090金融業者が逮捕された事例もあります。

（参考：神奈川新聞 | 2011年2月8日(火) 「無登録営業容疑で「090金融」営む7人を逮捕/神奈川県警）

 

完済させないシステム

090金融の目的は、とにかく法外な利息を支払わせることです。延々と続き、完済させないようにする悪質な手口で利用者を追い詰めます。

前述の通り、090金融が設定する金利は利息制限法の上限と比較すると明らかに法外であります。

カラ貸し

カラ貸しとは、業者から一度もお金を借りたことがないのに返済を迫る手法です。

当然、電話がかかってきた人は断りますが、脅迫まがいの言葉で追い詰めたり、過去に取引きをしたことを装って「1年前に貸した〜です。覚えてますか？」などと迫ります。

闇金業者を利用する人は、複数の消費者金融でお金を借りていることもあり、借金を把握しきれていない人もいます。

そのため、借りた覚えがないのに返済してしまう人が少なくありません。

このようなに多重債務者をターゲットにして、違法な金融業者はカラ貸しを行います。

一方、多重債務者等に架空の融資話を持ちかけ、お金を借りる際に保証協会に保証金を振り込ませる「保証金詐欺」という手口もあります。

もちろん、融資してくれることはなくお金を騙し取られてしまいます。

執拗な取り立て・恫喝

違法な金融業者は、脅迫まがいの執拗な取り立てを行います。

例えば、早朝や深夜に執拗に電話がかかってくる、自宅の玄関にお金を返すよう記載された張り紙が貼られる、お金を借りている本人以外の家族に電話をかけるなど、さまざまな嫌がらせを行います。

延々と利息を支払わせるのが目的であるので、執拗な取り立てを行うことで精神的に追い込み続けます。

個人情報の流出

一度でも090金融に問い合わせを行うと、それだけで電話番号が拡散されてしまう可能性があります。

なぜなら違法な貸金業者は、業界内で電話番号の横流しや情報共有を行っている場合があるので、執拗な勧誘やカラ貸しの被害に注意が必要です。

090金融の集客方法

090金融では紙やネットなど、あらゆる手口を用いて集客を行います。ここでは、具体的な集客方法を見ていきましょう。

街中のビラ

街中で「ブラックOK」「来店不要、即日融資」などの記載と携帯電話の番号が書かれた090金融と思われる看板が多数あります。

人通りの多い場所にある電柱やガードレールに無許可で看板を設置しているところが多く、これらも違法行為となります。

新聞や雑誌に広告を掲載

新聞や雑誌で「まずはお電話ください！」「即日融資」などと記載された広告で集客を行う方法です。

一見、貸金業者の広告を装っていますが、大抵は090金融などの闇金業者であることがほとんどです。

SNS

最近では、TwitterやInstagramなどのSNSを通じてダイレクトメッセージを送る闇金業者も増加傾向にあります。

Twitterでは、闇金と思われるアカウントが「#お金貸します」「#ブラックok」「#個人間融資」などのハッシュタグを付けて発信しているところを多く見かけます。

こうしたアカウントとやり取りをすると、しつこい勧誘が始まり、個人情報を聞き出して横流しする可能性もあるので注意しましょう。

ダイレクトメール

自己破産をすると官報に掲載されます。闇金業者は官報をチェックしていることがあり、ダイレクトメールを使って勧誘します。

官報に掲載された情報をもとに信用情報へ事故情報が登録されます。よって、一定期間はお金を借りることができません。

こうした正規の貸金業者から借入れができない人は、闇金業者や090金融の格好のターゲットにされやすくなります。

また、過去に闇金業者などを利用したことがある人や業者が入手した個人情報リストに掲載されている人に対して、ダイレクトメールを送付して勧誘を行います。

個人間融資の掲示板

インターネットの上の掲示板には、貸したい人と借りたい人の双方の書き込みがあります。

個人間の貸付けは、出資法で上限金利年109.5%と定められています。

そのため、高利回りが期待できる090金融は、掲示板に携帯番号を載せて積極的に勧誘します。

個人間融資の掲示板も正規の貸金業者から借入れができない人が利用すると考えられます。

090金融を見分ける手順

090金融は携帯電話を使って活動しますが、以前の闇金業者のように脅迫まがいのような厳しい取り立てを行わないため、正規の貸金業者と見分けがつかないこともあります。

ここでは、その見分け方を解説します。

①固定電話の有無を調べる

貸金業者は、各営業所に固定電話を設置しなければなりません。融資の勧誘があった際に固定電話があるかどうかを確認しましょう。

答えなかったり、電話を切ったりした場合は090金融である可能性が高いです。

②所在地に事務所があるか確認する

090金融は、事務所や営業所を構えたりしません。

融資の勧誘があった場合は、所在地や事務所の有無を確認します。しかし、嘘の住所を教えたり、電話を切るケースもあります。

Googleマップで住所を検索して、貸金業者が存在しているか確認する方法もひとつです。

そもそも住所が存在していない業者は、090金融と判断できます。

③貸金業者登録されているか確認する

金融庁ホームページにある「登録貸金業者検索サービス」で貸金業者登録されているか確認しましょう。

登録番号・所在地・社名などから正規の貸金業者を検索できます。

つまり、検索しても出てこない業者は、090金融のような闇金となります。

返済義務はない

法外な利息で貸付けを行う手口は、民法上の不法原因給付に該当します。

最高裁判決では、貸付け自体が公序良俗に反することで、元本についても返還する義務がないとの趣旨の判断を示しています。

以下、金融庁のホームページで詳細が記載されています。

損害賠償請求事件（平成20年6月10日最高裁判決）

既に090金融でお金を借りている場合の対処法

もしも090金融でお金を借りてしまったら、自分で対処することが難しくなります。

このような場合は、どのような対処方法が必要であるか解説します。

まずは返済をやめる又はしない

前述の通り、法外な利息での貸付けは、不法原因給付に該当するので元本と利息について返還する義務がありません。

まずは、090金融の取り立てがあっても返済をしないことが重要となります。

弁護士・司法書士に相談

自分では対応できないことがほとんどですので、法律の専門家である弁護士や司法書士に相談するのが有効になります。

依頼すると本人に督促などが来なくなるので精神的な辛さから解放されるでしょう。

弁護士や司法書士に介入することで、090金融が請求を諦める可能性もあります。

警察への相談

執拗な脅迫や暴力など、緊急性が高い場合は、警察に通報します。

このときに脅迫された音声や振り込み履歴などを記録しておくと、スムーズに対応してもらえる可能性があります。

ただし、無店舗で営業している090金融の捜査や摘発などは、民事不介入の原則があり、すぐに解決できるとは限りません。

まとめ

この記事では、090金融の特徴や手口、勧誘方法、見分け方、090金融でお金を借りてしまった場合などについて解説しました。

固定電話がなく、所在地がわからない違法な貸金業者は、090金融である可能性が極めて高いです。

手口としては、法外な利息を請求するため、完済させないように延々と執拗に取り立てを行います。

また、借りた覚えのない人に返済を迫るカラ貸しという悪質な手口にも注意が必要です。

090金融の集客方法としては、街中のビラ、新聞や雑誌に広告を掲載、SNS、ダイレクトメール、個人間融資の掲示板などのさまざまな方法を用いて行います。

また、法外な利息で貸付けを行う手口は、民法上の不法原因給付に該当するため、元本と利息の返済をする必要がありません。

これは最高裁の判決で示されたものです。

しかし、090金融でお金を借りてしまい困っている方は、関係を断ち切るために弁護士・司法書士に相談することが大切です。

脅迫や暴力で緊急性が高い場合は、最終手段として警察に相談しましょう。